同時録りのジレンマ

1. 同時録りのメリット

同時録りとは、文字通り、楽器パートを同時に録ることです。その利点は、

  • メンバーどうしで息を合わせやすい。
  • 何とも言えないライブ感
  • 簡易的な方法、時間短縮
  • 作曲、アレンジ、リハーサルの記録として手っ取り早い。

 

2. 同時録りのデメリット

 同時録りは、一筆書きのようなもので、演奏ミスを直すことが難しいのです。

  • リズムのズレの編集・修正困難。
  • フレーズの編集・修正困難。
  • パート単独の音質調整困難。
  • ヴォーカルピッチの修正困難。 

 

3. 音の被りについて

同時録りをすれば、部屋の中に複数のパートの音が響きます。ですから、各パートに配置したマイクは、狙った音だけでなく近隣のパートの音も拾います。これを被りといい、仕上がりを悪くする要因です。

  • パート間の位相がくるい、ミックスしてもクリアな音にならない。被りは同時録りする全マイクで起こり得るので、ミックスでの音の濁りは相当なもの。
  • パート個別の音質調整が難しい。
  • 被りが邪魔で、パート別の切り貼り編集ができない。 

被りを抑えつつ同時録りをするためには、音響特性の良いスタジオと経験のあるエンジニアが必要であり、これを街場の小さいスタジオに期待することは難しいです。


4. リズムガイドは役立たず

レコーディングで、ガイドとしてメトロノームを使えばリズムが整い、録音後のDAWでの編集の手間も減るはず。しかし、同時録りでは、足を引っ張るメンバーがいて上手くいきません。

  • メンバーの1人が、ガイドに対してズレる。
  • もう1人のメンバーが、ガイドに合わせるべきか、メンバーに合わせるべきか迷い、リズムがウネる。
  • リズムが不安定な演奏だと、録音したフレーズをコピーし、同じフレーズの場所へ貼付けできない。それぞれの部分でテンポが微妙に違うからです。 

5. 条件付きで対応します

  • 当スタジオでは、「音が被らない条件」での「同時録り」のみ対応します。
  • 基本となるパートは最初に同時録り。
    • ドラムやカホンはマイク録り。
    • ギター、ベース、キーボードはライン録り。
  • 追加で重ねたいパートは後から個別に録る。
    • ヴォーカル、コーラス、ソロをマイク録り。
    • ギターソロなどはラインのまま重ねても、あらためてマイク録りしても良い。
  • 同時録りは、手軽ですが、練習記録やデモを録るために使う程度にするべき。
  • あえて同時録りにこだわりつつ、売物(商品)にしたいなら、広いスタジオを選び、演奏能力も向上させることです。
  • もちろん、最初から上手な方はいませんし、やってみることには賛成です。